2008/12/15

追想


 時々ふと、ついこの間まで母の病院に通っていたという事が不思議に思える時がある。亡くなるまでの最後の2ヶ月、毎日のように家族が集まり、ああだこうだと話をして、皆でお茶を飲んだり母の足をマッサージしたり、時にただぼんやり過ごしたり。それは自分の人生に於いて何物にも代えようの無い、宝物のような大切な時間だった。偶然かもしれないが、この3年間を病院からそう遠くないヴェルディというクラブでプレー出来た事に深く感謝している。

 ヴェルディで過ごした時間、これまでのキャリアの中で一番、自分のプレーがイメージに近かったように思う。チームはいつもギリギリの状況が続いていた。それでも、どんな時でもプレーしていて本当に楽しかった。だからサポーター皆の「ありがとう」と言う別れの言葉に対し、自分が返す言葉も「ありがとう」になる。サポーターの期待と励ましと声援と、逆境や感動を共有できた事に。本当にありがとう。

 サッカーをキャンバスに喩える事があるが、それならばヴェルディは既に一度完璧に完成された絵だ。Jリーグの歴史が続く中で、人間が入れ替わりつつ、それぞれが日々一筆ずつ足して、なお絵として新たな魅力を持ち続けるというのは簡単な事では無い。大きくバランスを崩したり何かを失ったりする事もある。ただ、大事なのはその過程を経てクラブから伝わってくる直向さやヴィジョンなのであって、そこから発せられる強いメッセージが、将来への期待や夢になってサポーターを惹きつけるのだと思う。

 ヴェルディが今後もヴェルディらしくありつつも、新たな魅力の種を蒔き続けるクラブである事を期待している。