2006/09/29

朝顔


 先週、ずっと自分の活躍を楽しみにして、いつも応援してくれていた祖父が他界した。山形戦のため葬式に出席する事は出来なかったが、試合後に新幹線とレンタカーを乗り継いで、夜中には岡山県にある祖父の家に着いた。翌日に父と伯父の墓参りをして月曜日に東京へと戻る慌しい旅だったが、緑の山々に囲まれた祖父母のいる田舎に行くと、初心に帰る。

 山形戦は久しぶりの完封勝利となった。苦しい試合を皆で力を合わせて無失点にした事に大きな価値はある。しかし個人的には、得点は出来たものの手放しで満足できる状況ではない。今までの一生の殆どをサッカーに打ち込んで来た事を照らし合わせると、どんな試合の後も、もっとやれるという思いが込み上げる。残り10試合、どの試合の中にも無駄な時間は1分も無い。

 そんな中、初めてヴェルディサポーターの前で受けたヒーローインタビューは嬉しかった。その前節に愛媛までバスで10数時間かけて遠征を敢行して駆けつけてくれた多くのヴェルディサポーター。遠いアウェイの地で90分以上喉を嗄らしてくれたサポーターと分かち合う勝利は、選手にとっても特別なものだった。インタビューの中で、「いつも声援をありがとう」という簡単な一言を言えなかったのが悔やまれるが、試合で自分のベストを尽くす事で、期待に応えられればと思う。
 写真は、我が家で膨らみつつある朝顔の種。

2006/08/18


 8月もあっという間に半分が過ぎた。7月中は梅雨の雨のせいか、それほど暑いと思うことは無かったのだが、8月に入ってからは犬の散歩で7時前に家を出ると、すでに十分に暑い。毎日うだるような蒸し暑さの中で練習をしている。ヴェルディには日本のクラブでも髄一とも思える、サウナと水風呂の付いた立派な風呂場がある。普段は苦手なのだが、夏場の練習後の冷えた水風呂は気持ちが良い。

 新たにジウマールが仲間に加わって、1月にスタートした時点とは、外国人選手が丸々入れ替わった事になる。諸事情で慌しくチームを離れたアナイウソンとデジマールとは、別れの挨拶もろくに出来なかった事が心残りだが、新しくやってきた3人は、その明るい性格のせいか、それともクラブの培ってきたホスピタリティからか、すでに昔からいる仲間のようにチームに馴染んでいる。例年に無い程のシーズン中の補強も、一昨日の味スタを借りてのトレーニングも、全て昇格という大きな使命があり続けるからである。

 今週は、スタッフと、そして選手だけでと二度のミーティングで、チームがこれからどう戦い続けるかを話し合った。

 写真は外房の海で。快晴のオフの日に、初めて地元である千葉県外房の海水浴場に行ってみた。やがて来る台風の影響で高い波の打ち寄せる白い砂浜と海の水は、想像よりもずっと綺麗だった。

2006/06/30

サッカーボール


 急激に蒸し暑くなってきた。そんな中今週は二度の練習試合の後、木曜日には午前午後の二部練習をこなすハードな一週間となった。夏場のJ2で勝ち点を重ねる為には、ベースとなるコンディションを底上げして、維持していかなければならない。少々きつくてもトレーニングの負荷は上げていくべきだ。そしてその分、例年以上に練習時以外の休養にも神経を使わなくてはならない。

 少し前の話になってしまったがプロジェクト・エスペランサ(blog)のチャリティーによる、サッカーボールの配布が無事に行われた。チャリティーに協力して下さった、多くのファンの方々やプロジェクトの仲間に感謝すると共に、今後も少しずつでも活動が広げていければと強く思う。パラグアイ代表チームはグループリーグで敗退してしまったが、ワールドカップではセロ・ポルテーニョのチームメイトも数人プレーしていた。サッカーだけが成功する手段という状況で自分の力を信じ、ワールドカップの檜舞台でプレーする彼らは、パラグアイの子供達の希望でもある。そんな仲間の活躍に大いに刺激を受けた。

2006/06/11

J.VILLAGE


 少し前の事になってしまうが、アウェイでの蔚山現代戦のために韓国を訪れた。空港からバスに乗り込みホテルへと向かうと、すぐにハングル文字の看板や標識が目に飛び込んでくる。挨拶程度の言葉は知っていても、当然ながら読み書きは何一つ分からない。ふと、日本にやってきた外国人選手の、日本で生活を始める際のストレスが、いかに大きいかを感じた。

 音として言葉を覚えていく事は可能でも、テレビや街で目から入ってくる新たな言葉の意味を参照したり覚えるのは、さぞ骨の折れる事だろう。幸運にも自分が行った国々では、アルファベットで綴られた文字を目で追って言葉を覚える事が出来たが、三種類の文字を使う日本語は手の付けようが無い代物にも思える。

 今日からJビレッジでのミニキャンプがスタートした。自分にとってもと大事なキャンプではあるが、チーム内のブラジル人選手を少しでも助けられればと思う。写真は韓国から戻り、そのまま遠征し二泊した松山で。

2006/04/28

ホテル


 前泊のホテルに向かう道の異様な混み具合と運転中のラジオで、世間がゴールデンウィークに向かっている事を知った。明日から愛媛の試合まで、ゴールデンウィークをぶっ通しで遠征が続く。計算すると、年間60泊以上をホテルに滞在する事になる。そのため今年は、東京に戻る引越しに伴い、サッカーチャンネルと共に映画チャンネルを契約して、ホテルや移動の時間の多くを映画を観て過ごしている。その内の一本、「モーターサイクル・ダイアリーズ」。

 南米でプレーしていた頃、多くのチームのサポーターの様々な横断幕の中に、いつも見かけたのが、ジム・モリソンとチェ・ゲバラだった。左翼的なゲリラ活動や思想は知っていたが、南米を良く知る知人から薦められて映画の存在を知り、23歳で初めて国を出て南米を横断した医学生が、何を見てどう感じたかという事に興味を持っていた。

 映画には美しく険しい風景、人懐こくて暖かい人々、そして、南米のどの国にも存在する、人々の過酷な状況があった。それは、時代こそ違えど自分が好きになった南米のそのままの姿だったように思う。ダンス音楽やアルゼンチン訛りのスペイン語も懐かしかった。そして、なんでもないシーンの一つ一つに、大いに共感した。

 忙しさと情報量の多さ、時の経過の甘えに流されずに、自分の思いを大事にして生きたいと思った。

2006/04/23

「のぞみ」


 J2リーグは移動が多い。柏戦で今期リーグ戦に初出場して以来、水戸・鳥栖とアウェイが続き、国立でのホームを挟んだ後に、今週は火曜日に仙台、土曜日に神戸と新幹線での移動となった。勝ち点3を持ち帰れれば、移動の時間も短く感じられるのだが、今週はなかなかしんどい1週間になってしまった。何時間もの移動の後に出場した短い時間で、持っている力の全てを出し切れなかった悔しさが、オフとなった今朝も残る。来週以降は韓国遠征を含みアウェイの愛媛との試合まで連泊連戦となる。移動疲れを溜めないためにも、試合に勝つ事が次の試合への最善の準備となる。

 写真は新幹線から見える富士山。「のぞみ」には昨年から何度も乗っているが、この日は午後の移動で天気も良かったため、久しぶりに綺麗な富士山を見ることが出来た。

2006/04/04

午後練習


 蔚山現代との試合で悪化してしまった怪我も癒えて、ようやく先週末にピッチに戻ってくることが出来た。柏との試合に間に合い出場できた事は良かったが、数的不利であったとはいえ、出場した20分で追いつく事の出来なかった悔しさが残る。長いリーグ戦の最後まで、連戦の忙しさに目を瞑らずに、1試合ずつの細かい修正を積み重ねなくてはならない。明日から今期初めてのアウェイでの連戦になる。

 これまでどのチームでも、シーズンを通して午前中に練習をする事が多かったのだが、今年のヴェルディは午後からの練習が多い。午後の練習後にどこかに出かけるような事は出来なくなってしまうが、午前中はゆっくりと過ごせる。夏に近づくにつれ、15時からの練習は不可能になるので、早朝か夕方の練習へとシフトされていくのだろう。この日、朝食後に近所の公園に桜を見に出かけると、強風で桜吹雪が舞っていた。

2006/03/20

esperanza


 これまでサッカーに携わり、世界の様々な場所で様々な仲間とボールを蹴ってきました。そこで学んだ事、得た経験は掛け替えのない物として蓄積され、今の自分にとって常に大きなエネルギーとなっています。

 自分が実際に眼で見てきた沢山の出来事。その中でも、日本に帰ってからも常に心の中から湧き上がる思いがあります。昨年末に、同じ思いを持つ仲間の助けを得て、このプロジェクトを立ち上げる事が出来ました。

 プロジェクト・エスペランサのページが正式オープンしました。esperanzaとはスペイン語で希望を意味します。南米で「お前の名前の望って、どんな意味?」と聞かれると、いつも「‘esperannza’。」と答えていたものでした。覚えたスペイン語の中でも一番好きな言葉です。今後、少しずつでもサッカーを愛する人々に、このプロジェクトが持っている思いを伝えていけたらと思います。

 写真はパラグアイリーグ開幕直前の練習試合で、ポーズをとるチームメイト。観戦無料の練習試合には、大勢の子供達がグラウンドを訪れる。パラグアイでは、サッカーは誰もが楽しめる唯一の娯楽と言っても良い。

2006/03/10

蔚山現代戦


 蔚山現代戦は残念な結果に終わったが、チームの方向性と課題とを見出せた試合になった。国際試合の舞台は、普段の生活では決して感じることの出来ない、代え難い経験になる。

 リハビリ明けの初めての試合となったので、試合前に痛み止めの注射を射っての出場となった。短いミーティングの後、選手がウォーミングアップに出かけロッカールームは空になる。注射はその隣にあるスタッフの控え室で射ってもらった。刺さる針の痛みを紛らわし、ふと周りを見ると、部屋に簡易に作られた祭壇に、監督が祈りを捧げていた。かなりの時間をかけて注射を射ち終わった後も、その祈りは続いていた。

 南米でプレーしていた時、試合前には必ず選手とスタッフ、そして関係者全員が集まり輪となって祈りを捧げた。リベルタドーレス杯やオリンピアとのダービー、決勝戦等の特に大事な試合の前には地元の神父も駆けつけてくれた。自分はキリスト教徒ではなかったが、皆の純粋な祈りの輪の中にいて、吹っ切れたように全力で試合に臨んでいくチームメイトに大いに影響されていた。信じていなくても、神に祈りたくなるほど心の底から勝ちたいと思った試合も数多くあった。自分に足りていなかった何かを得た経験だった。

 ロッカールームで監督が祈る姿を見て、日本に帰ってきてから自分が忘れていたようにも思えた気持ちになる事が出来た。J1に復帰することは容易では無いかも知れないが、出場する試合の全ての時間で力を出し切り、チームとサポーターの祈り、願いを叶えたい。

 写真は試合前日の宿泊ホテルから見える東京タワー。東京に戻ってきたことを実感する。

2006/01/27

練習前


 芝生の上を真っ白に覆い尽くした大雪のため、この1週間、人工芝でのトレーニングを余儀なくされていた。足腰への負担の疲労を考慮して昨日はオフとなり、ようやく今日から天然芝での練習が再開されている。ヴェルディの人工芝の施設は最新で素晴らしい物だが、やはり天然の芝生の上でのトレーニングは良い。

 練習場に到着して、明るく窓の多いクラブハウスに入りロッカールームへと向かう。ジャージに着替えてシューズルームへ行くと、選手全員のスパイクが手入れされて綺麗に並べられている。泥だらけになっても、雨でびしょ濡れになっても、翌日にはスタッフの手できちんと乾かされて磨かれたスパイクが、出番を待ち整然と棚に並んでいる。

 クラブハウスに入る度に、そして、このシューズルームに入るたびに、ヴェルディは2部にいてはならないと強く思う。

2006/01/13

新年


 どこかに戻るというのは、これまでで初めてだ。ただ、ヴェルディに戻る事は、ずいぶん前に決めていた。チームにとって、膨大な試合数をこなす過酷なシーズンは、結果を残して1部に上がるかゼロかである。必ずヴェルディを1部に戻したい。

 チームの始動が予定より早まり、新年早々から新居探しと引っ越しで慌しくなってしまったが、何とかスタートまでには落ち着けそうだ。セレッソで年末までトレーニングを続けていたため2週間余りの短いオフになる。しっかりと準備をして新シーズンに望みたい。写真は昨年のシーズン最終日にブルーノと。