2010/11/30

最終節


 サッカーに触れていると、時に様々な苦しさが付き纏う。残留や昇格の争いだったり、自分の愛するクラブがなかなか前に進めずにもがいたり。選手もファンもクラブも、ボールが気まぐれに動く度に歯を食いしばり、目の前の敗戦にも、ライバルクラブの躍進にも心が曇る。しかし、サッカーの本質から、こんこんと無限のように溢れ出してくるのは、人を夢中にさせる喜びや感動だけだ。この3試合、ザスパ草津が戦うピッチには、サッカーをプレーする喜びと、そこに立ち会い共に戦うサポーターの喜びが溢れていた。最終節を迎える今、自分がザスパの一員としてこのクラブの原点ともするべき状況に身を置けることを嬉しく思う。

 思えば、サッカーをやっていて一番苦しかった時、自分はブラジルにいた。日韓ワールドカップが開催される中で国内リーグも並行して行われていて、人々はまさにサッカー漬け。しかし、その熱狂はどこかからの借り物のようにやって来たのではなく、ボールと人のあるところに溢れ出る熱として、超然と存在していた。当時、自分の周りには給料未払いで苦しむチームメイトやスタッフ、クラブに住みこんでチャンスを掴もうと必死の若手選手たちがいた。クラブに集まる様々な人間の中心にサッカーがあって、苦しい状況の中でも熱が生まれて、皆が生きていくエネルギーになる。前に進めずにもがいていた自分に、ブラジルはサッカーの奥の深い楽しさを教えてくれた。

 プロサッカーの無かった地域に小さく生まれて、サッカーが日常に無かった人々を巻き込んで、ここまで戦ってきたザスパ草津。力強く無限の湧出量を誇る草津温泉の湯のように、喜びや感動の湧き止まないクラブでありつづけるようにと願いを込めて、最終節に臨みたい。